従来は裁量の結果に着目して裁量の逸脱・濫用の有無を審査する手法がとられていましたが、最近では結果に至る判断過程の合理性について審査する手法がとられるようになってきました。

ここでは審査手法のひとつとして「重大な事実誤認」について説明します。

事実誤認によって裁量の逸脱・濫用を認めたものに最判昭和53年10月4日判決(民集32巻7号1223頁)があります。有名なマクリーン事件判決です。判例では、法務大臣の判断が「全く事実の基礎を欠く」場合に裁量が逸脱・濫用であるとしました。

しかし、法務大臣が「全く」つまり誰が見ても明らかで疑う余地のないほどに事実を誤認することはあるのでしょうか。多分ありません。ということはこの手法では非常にひろく裁量を認めることになるので、ほとんどのケースで事実誤認は起きないことになります。

ところが最近の判例では「重要な事実の基礎を欠く」と変化しています(最判平成18年2月7日民集60巻2号401頁)。

「全く」から「重要」になったので、裁量は狭くなったといえそうです。

この判断枠組みによる場合、問題は「重要な事実」とはどういう事実をいうのかです。仮に「重要な事実」とはそれを考慮しなければ結論を異にするような事実をいうと解釈すれば、行政サイドが基礎としなかった事実について、その事実が判断の基礎とされた場合に処分が変わったか否かを検討すればよいことになります。

これを論理的に説明すれば――重要な事実とは行政庁が考慮していれば処分の結論を異にするような事実をいう。○○という事実は××であるから、考慮されていれば△△という点で結論を異にしたといえる。したがって○○は重要な事実である――となります。

そして名古屋地裁平成22年12月9日判決によれば、行政庁の判断が重要な事実の基礎を欠く場合には裁量の逸脱・濫用が認められます。

○○は重要な事実ですから、それを考慮しなかった行政庁の判断は重要な事実の基礎を欠くといえます。したがって行政庁の裁量には逸脱・濫用が認められるわけです。

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